-From 6-
しっかりと体を支え、ガウリイは頬をなぞった。 羞恥からか、ゼルは俯向いて目をかたく瞑っている。
彼と寝たその肌の記憶を、 血の流れの音だとか、 身体に絡んだ金の髪だとかを――
その舌の奥のほうの味を。
この男は、 キスのたった一つで、 見事なくらい鮮やかに、 易々と思い起こさせる。
目を閉じて、 その一つひとつの感触を自分の中で確かめる。
「あんたは相変わらずだな」
軽くガウリイの額を小突く。
よく言うぜ。 あんたにそのチャンスが訪れたのは、つい一昨夜のことだろう?
声にこそ出さないが、呆れたようにガウリイを見上げた。
そんな自分の表情の、 どこが楽しいというのだろう。
彼は人懐っこい笑顔を見せる。
感情がハレーションを起こす。
こいつは、おれのことをどう思っているんだろう。
おれは好きでたまらないのに。
-To Expectation-
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