-From 3-
『偽りの無い忠告』はそれはソレとして聞いておくとして、ゼルガディスはいつもと同じセリフを吐いた。
溜息混じりのそれは本当に吐き出したような言葉で、何処か熱っぽさを帯びていた。
「毎度毎度何の用だ。まさか魔族の神官はは閑職なんじゃあるまいな?」
疑問形になっているのに返答を期待していないともみえるセリフに、ゼロスは椅子に座り胡散臭い笑顔を見せた。
「やだなぁ。僕はただ単に真実を告げているだけじゃないですか。そんなに目の敵にされるような憶えはありませんけど」
相変わらず絶好調らしい、のらりくらりと真実をちらつかせるだけの喋り方に苛つく事さえ愚かしくなった。
今では、ゼルガディスは内心何処かでリナ達とは共感し得ない心に巣食った闇にゼロスといる間だけ安らいで享受している。
「魔族なんて素直なものでしょう?人間のように嘘偽りは言葉にしません」
「それもそうだな」
ゼルガディスはレゾや過去関わって来た忌々しい記憶の蓋を開くと静かに同意した。
その過去の多くが忌々しくあってこそ、安らかな笑みを称え思いだされる事ではない。
純粋に心の闇だけで言ってしまえば、ゼルはリナやガウリイ達よりゼロスの方に揺らぐ程だった。
木々のざわめきが遠くに聞こえ、ゼロスがいつの間にかゼルを背後から抱き込む。
「リナさんの力は僕から見ても人間にしては賞賛に値します。けれど……僕としてはゼルガディスさんの方が一緒にいて落ち着くんですよ」
蠱惑的な紫の瞳がゼルガディスを捕らえる。
「貴方の心は僕の興味を酷く刺激するんです」
ゼロスはそう囁くとゼルガディスと唇を重ね、口内を浸蝕した。
-To 誘惑-
|