-From 1-
蒸し暑さもだんだんと薄れ、夜が…長くなってきた。
山頂に近い岩場から麓にひろがる街の灯りを一望してゼルガディスは溜息をつく。
こんなふうに近くに見えるとはいっても、徒歩ではかなりの距離がある。
幸い今の季節は明け方少し冷え込むぐらいで野営をするのも苦にはならない。かえって麓より涼しくて過し易いと、いろんな意味で逞しい旅の連れ達は今夜のねぐらと決めた洞窟で早々に夢の中だ。街に入ればそれなりに煩わしいことの多いゼルガディスにとってもそれはもちろん文句などあろうはずもないことなのだが…。
しばらくそのままで辺りに響く虫の音に耳をかたむけていると、それに混じって近づいてくる微かな足音に気付く。
ゼルガディスはそれが誰かを確信してゆっくりと振り向いた。
-To 夜半の訪問者-
-To 黄金の月-
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