-From 1-
薫風が、林を駆ける。
「ーー春……か……。」
また、季節が過ぎた。
あれからどれ位経ったのだろう。
思い出すのは、<あの人>の事。
二つの顔を持った、
強大な、<あの人>事。
思い出すのは、彼奴らの事。
一緒に旅をした、
愉快な、彼奴らの事。
そして…彼奴の事ーーーーーー
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人気の無い街道を、その男は歩いていた。
全身を白い衣に包み、フードとマフラーで
顔を隠している。
その男の名はーーゼルガディス。
かつて、<あの人>によって邪妖精(フロウ・デーモン)
と岩人形(ロックゴーレム)にされた身体を元に戻す為、
彼は旅を続けている。
「陽が傾いてきたな…。」
(陽が落ちるまでに次の町にたどり着けるか…?
今晩は野宿か…。)
ザワッ……
(風が変わった…。
新芽の香りの中に一点…これは……)
「深い…闇の気配……。」
ザワッ……
「はあい☆」
-To 闇色に-
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